日本でカエデの新種発見


アマミカジカエデ Acer amamiense Yamazaki

植物研究雑誌  Journl of Japanese Botany Vol.75 No.5  October 2000

発行所     津村研究所  Tsumura Laboratory

A new Species of Acer from the Ryukyus    Takasi YAMAZAKI
琉球からのカエデ属の1新種            山 崎  敬(75: 282-284)

 1999年 6 月, 奄美大島に行った際, 地元の山下弘氏から未知のカエデの生育場所に案内されて, その調査を依頼された.常緑樹林脇の斜面にはえていて, 高さ 4 m 程の木本で, 丁度果実が多数ついていた. 調べたところ, カジカエデ Acer diabolicum Blume によく似ていた. しかし, カジカエデは九州では熊本県, 宮崎県以北に分布し, 鹿児島県には知られておらず,奄美大島では飛び離れた分布になる. 詳細に比較するとカジカエデの葉柄や葉の裏には多数の毛が生えているのに, 奄美のものは殆ど無毛である.またカジカエデの果実には短い軟毛がある他に, 長い剛毛が生えていて, これがカジカエデの大きな特徴であるが, 奄美のものは短い軟毛だけで,剛毛はなく, ル−ペで見なければ無毛のように見える. カジカエデに良く似ているが, 分化の程度の弱い別の種類として扱うのが妥当と考える.これをアマミカジカエデ Acer amamiense Yamazaki と名付ける. 6 本ほど見つかっていると言う.現地でも希少な植物である.
 現地を案内され, また花の時期の標本を送って下さった山下氏に深謝します.
(165-0031 東京都中野区上鷺宮 4-1-6)

津村研究雑誌 要約に接続  http://www.jjbot.com/Japanese/Vol.75/75-5.html#Anchor819875



ナンゴクテツカエデ  Acer nipponicum var. australe Yamaz
キタノテツカエデ    Acer nipponicum var. orientale Yamaz
コウシンテツカエデ  Acer nipponicum var. koshinense Yamaz


植物研究雑誌  Journl of Japanese Botany Vol.75 No.2  April 2000

発行所     津村研究所  Tsumura Laboratory

(日本語の部分のみです)
Local Variations of Acer nipponicum Hara     Takasi YAMAZAKI 
テツカエデの地域による変異            山 崎  敬(75: 111-115)

山崎 敬:

テツカエデは日本の固有種で,東北地方から九州中部までに広く分布している.今までは総て同一形態のものと考えられていたが,詳細に比較すると,地域的な変異が存在する.最も大きな相違は花序の構造である.東北地方から中部地方のものは,一つの花序は雄花ばかりでできているものと,雄花と両性花とが混在するものとがある. 花序の軸はしばしば分枝し,花梗は一般に伸長して(1-)2-6個の花をつける.雄花と両性花が混在する場合,花梗の下部に雄花が,先端に両性花がつく傾向がある.それぞれの株は雌雄同株ではないかと考えられる.近畿地方以西,四国,九州のものは,一つの花序の花は総て雄花か両性花で,混在することはない.常に分枝せず,小花序は殆ど伸長せず1-2(稀に3-6)個の花をつける.雌雄異株である.以上のように異なるので,両者を亜種として区別し,近畿以西のものを subsp. nipponicum,中部以東のものを subsp. orientale とした.
Subsp. nipponicum でも近畿,中国地方,北九州のものと,四国,九州中部のものは,葉の裏面の毛のはえ方が異なるので,変種として区別し,前者をテツカエデ var. nipponicum,後者をナンゴクテツカエデ var. australe とした.また subsp. orientale でも,東北地方,中部地方北部のものと,中部地方の長野県の中部以南,山梨県,静岡県,埼玉県北部のものとは,葉の裏面の毛のはえ方が異なるので,変種として区別し,前者をキタノテツカエデ var. orientale,後者をコウシンテツカエデvar. koshinense とした.
以上のように区別した場合,A. nippinicum Hara の typical のものはどれに当たるかということが問題である.A. nipponicum Hara はA. parivflorum Franch. & Savat. に先行名があるために改定されたもので,後者の基準標本がTypeになるのであるが,これは Savatier が日本で採集したというだけでそれ以外のことはわからない.また記載からもいずれとも判断できない.ただ幸いなことに,記載とは別に検索表があって,ウリハダカエデA. rufinerve Siebold & Zucc. とテツカエデの比較がなされている.ウリハダカエデ,テツカエデ共に Pedicelli flores aequantes, vel illis breviores と記し,花柄が長くないとしていて,テツカエデの基準標本の花序はウリハダカエデの花序に似ていることが示されている.またウリハダカエデとの区別として,テツカエデは Flores vix 2 mill. aequantes brevissime pedicellati; folia adulta subtus ex toto pubescentes と記されている.一方ウリハダカエデは Floes 4-5 mill. longi; folia etiam juniora in nervis tantum rufescenti puberula とある.したがってテツカエデの毛は褐色とはされていないことになる.以上の記事からテツカエデに基準標本の葉は裏面全体に毛があり,それは赤褐色でないことになる.この型は近畿・中国地方,北九州のものに該当する.当時の状況からすれば,最も入手の可能性の高い地域である.基準標本を確かめなければ最終的な結論はだせないが,近畿以西のものを,テツカエデの基準型としておく.
資料を収集するに当って,羽賀 実,狩山俊悟,三谷 進,中沢 保,兵頭正治,荒金正憲,真柴茂彦,南谷忠志などの諸氏にお世話になった.厚くお礼申し上げます.(東京都中野区上鷺宮4-1-6)


津村研究雑誌 要約に接続 http://www.jjbot.com/Japanese/Vol.75/75-2.html#Anchor251928 


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