カエデのメッカ和佐又から大普賢岳
第400回記念観察会に参加して

近畿植物同好会会報N第54号 1991年11月 矢野正善

 あこがれの「和佐又」に、再来できた嬉しさに少々、はしゃぎ過ぎた。「和佐又」から「大普賢岳」では、ホソエカエデ、ナンゴクミネカエデに会えるからである。もう一つ、もしかすれば、みつかるのではないかと、思うカエデがあるからだった。
 21日バス停「和佐又口」から谷に入り、「和佐又ヒュッテ 1150m」の間において、多く見られたカエデ類は、コハウチワカエデ、ヒナウチワカエデ、オオモミジ、オニイタヤ、チドリノキ、ホソエカエデ、コミネカエデで、少数ながら、イロハモミジ、エンコウカエデ、ウラゲエンコウカエデが、みられた。
 ホソエカエデは、近畿において大変めずらしい種である。ウリハダカエデに似た葉形の木で、濃い緑色。葉の上面は滑面、葉裏も毛が無く脈腋が白い、葉軸が赤く滑面。枝も赤褐色で、幹はウリハダカエデと同じく、くすんだ緑色に黒の縦縞、瓜肌文様がはいる。秋は赤く紅葉する。  「ヒュッテ」の右横に、種子のつけたホソエカエデがあった。以前植えたものらしい。
 「和佐又ヒュッテ」から「和佐又山々頂 1344m」の間では、オニイタヤ、エンコウカエデ、オオモミジ、コハウチワカエデ、ヒナウチワカエデ、コミネカエデが見られる。それに「ヒュッテ」から「分岐点」の間にアサノハカエデ、「ヒュッテ」左横にミツデカエデが1本づつあることを教わった。山頂近くは、コミネカエデが多く、コハウチワカエデもよく見かけられた。
 22日「和佐又分岐点」から「大普賢岳山頂 1780m」へ向かっては、ヒナウチワカエデ、コハウチワカエデ、コミネカエデが多く見られ、オオモミジ、アサノハカエデが少々あった。「小普賢岳」付近から「大普賢岳」山頂まで、オオイタヤメイゲツ、ナンゴクミネカエデが、主に多くあった。もしかすればと探していたイトマキイタヤが、1本だけみつかった。感動であった。
 ナンゴクミネカエデも、近畿では、この辺の高山にのみ自生していて、今回よく観察できた。コミネカエデとの違いは、大変難しく、村田源先生の同定法では、花にて判別するとある。しかしこの季節なので、葉に頼るしかない。「大普賢岳」付近のナンゴクミネカエデに限るが、葉裏全体、または葉脈付近に特に茶色の短毛が多くある。(コミネカエデも少し短毛あり)葉はやや大きい。葉形は、コミネカエデとよく似たものもあり、判別の対象にはならない。枝及び、徒長枝の伸びは、高山に自生している為かもしれないが、やや短い。しかしこのような判別方法は、他の地域の自生の同種には通用しない。
 23日「和佐又分岐点」から「底無井戸約1000m」の道には、コハウチワカエデ、オオモミジ、エンコウカエデが多く、ヒナウチワカエデ、チドリノキ、コミネカエデ、オニイタヤ、ウラゲエンコウカエデなど見られた。「底無井戸」クサリ場にはホソエカエデを多く見た。少々判別に迷うエンコウカエデが多くあった。葉の基部にのみ短毛がありイトマキイタヤの特色を持ているものである。チドリノキ、ヒナウチワカエデの木には、種子のあるものも見た。
 3日間、観察して気付いた一つに、この辺のカエデ類は、カエデとしては大木であるものが、多く自生していた。コハウチワカエデ、ヒナウチワカエデ、オオモミジ、コミネカエデ、オオイタヤメイゲツ、イタヤカエデなどで、素晴らしかった。また2〜3mの高さの次期森林木も多くあった。道端の木は、草と共に刈り取られていたが、ひこばえしていたし、小さな幼木もあった。
 今回も少し見つかったのは、オオイタヤメイゲツと、ヒナウチワカエデの中間種である。以前に登った「弥山」にもあった。また成木のオオイタヤメイゲツでも日蔭の木は小葉が多く、ヒナウチワカエデの葉と判別困難であるものもあった。オオモミジも、日蔭の木の葉は深裂で、本当のフカギレオオモミジかどうか判別困難であった。コハウチワカエデの小葉である、ヒメウチワカエデらしきものもあったが、不成長な木なのか断定は、しかねる。
  カエデ科植物も、まだ未知の部分がある。分類同定しにくい中間種のもの、安定しない葉形、矮性石化などあるので、出来れば1本の木で2季節の観察が必要であると思う。
 「また来たい」と思いつつ、幾度ともなく歩くのを忘れ、カエデの木を仰ぎ見していると、めまいをおこし重心を失い、ふらふらになっていた。沢山のカエデに会えたこと、会員の皆さんのご協力もあって、私にとって忘れられない、ありがたい思いでの場所となった。
     
                        オオイタヤメイゲツ

TOP                INDEX