こだわり私考   1999年7月


 日本には古くから(元禄時代)カエデの愛好家がたくさんおられたはずなのに現在私の知るかぎりでは大変少ないように思える。あまりにも簡単に見捨てられているように思ったので、そんなに誰もやっていないなら私がやろうと、勝手な使命感と、競争相手のいない気楽さがきっかけである。ある程度収集してくると、コレクター独特の収集癖が生れてきて、考えと愛着みたいなものも生れ、始めた頃の思いとは随分変わってしまった。
1980年春、岡山県の黒田千秋(当時奈良在住)さんが成人式記念に「野村」というオオモミジを奈良市から貰われた。その木を私にくださったのが第一号のカエデである。
 現在カエデの好きな仲間四人で紅葉同好会を作っているが、お互い仕事を持っていることと東京、神奈川、静岡、奈良と離れており一同に会する事が出来ない。そこで回覧帖を作り年二回の回覧をしておる次第。その回覧帖も七冊にもなった。
 それぞれ 芦ケ久保紅葉見本園 鴫立沢槭樹園 等と名前を付けておられる。私の庭を玩槭庭(玩槭亭)と名付けたのは、福永武彦著「玩草亭百花譜」の影響によるものである。
 即ちカエデと遊ぶ庭(亭)という意味でつけたものだ。玩槭亭と数年間書いていましたが、この機会を便乗して玩槭庭と変更した。かしこまらず、そのまま伝わるように思ったからだ。
 この庭は、奈良市在住の坪村医院(坪村一郎氏)のご厚意でお借りしている庭で千本余のカエデの木を育成している。それは園芸店で買ったもの、友人に枝を頂いて接木をしたもの、山や人里のカエデの小枝を接木したり、種子をまいたりして名前をつけたものである。
 カエデの葉は変異の幅が広く、変わったものは雑種、栽培品種として扱われることに不信を覚え、確かな同定が出来るよう、さく葉標本(現在七千枚)を作り変異の幅を確認している。しかし、ある季節に採取したさく葉で、同定することは大変危険が生じる。1年を通じて観察をすると予期せぬ現象が生じていることに気づく。あやしきものは接木をして成長段階と四季の様相を観察するようになってよくわかるようになった。
 奈良県内には26品種の自生のカエデの種類が見つかっている。観察会などを利用して二百箇所に及ぶ場所のカエデの標本が出来たので不完全ながらも奈良県内カエデの分布表〈中間発表)なるものも作成した。近い内に見ていただこうと、パソコンの勉強をしている。
 自然の中で変わった葉形を見つけると名前をつける。それが栽培品種として扱われる。また栽培品種の種子を育てると特色のあるものが確率よく誕生するが、五年以上育成しないと安定しない。場所と時間を取るが、しかし、この間が何よりの楽しみなのだ。
 植物図鑑を見てカエデの同定が出来ない頃から、疑問を覚え自然種を育成する毎日の中で同定を覚えたが、後になってから植物図鑑を見て役に立ったり、益々疑問を感じるものも生れてきた。
 今現在特に関心を持っているものは ヤマモミジ Acer amoenum var.mathumurae だ。このカエデは自生の樹木を見ても葉形が多彩。季節によっては判断を誤ることがある。Sect.Palmata (イロハモミジ節)のすべてに似かよった葉形があり、東大日光植物園の標準木とされている葉形、特色がオオモミジに片寄ったもののようにおもえる。このような疑問が興味をもたせるのである。
 学名は各大学によって異なっていること、新しい学説が生れても採用されるまで年月が相当かかること、変種、品種に疑問を感じる事がある。特に栽培品種にいたっては変異なのか雑種なのか、わからない点もあろうが、世界中がイロハモミジ、オオモミジ、ヤマモミジをすべて Acer palmatum cv.(cv.= cultivated variety)の中に入れられていることが我慢できない性分なので。これを出来うる限り厳密な同定をしたかったので私はあえて下記のようにこのホームページではあつかった。

学  名

使用栽培品種学名
 イロハモミジ Acer palmatum   Acer palmatum cv.
 オオモミジ  Acer palmatum var. amoenum
        Acer amoenum
  Acer amoenum cv.
 ヤマモミジ  Acer palmatum var. matsumurae
        Acer amoenum var. matsumurae
  Acer matsumurae cv.

どう見ても中間種、雑種と思われるものは Acer matsumurae hybrid cv. とした。とは言っても、観察したときの独自の判断なので間違っていることもある。人から忠告によって、後々訂正をしていくつもりである。
 ヤクシマオナガカエデ(屋久島産)に関しても、現地から苗を送ってもらったり、種子を手に入れ何年もまいてみての結果、ホソエカエデ(奈良県産)と何ら変わりが無いので、私は同種で地理、気象、土壌によって変化がでたものとみなした。後にこの事は改めて書くつもりである。
 よく似た園芸品種に多くの名前が付いているので、忠告を受けているが、販売権による登録権はあっても、業者、コレクターによるカエデの名前登録システムはない。同一であるかどうかの確認は個人の判断によるものである。コレクターは微々たる変化に敏感であり、違いに対しては別名をつける。何々実生A とかB と名をつけて長年放置するには、野球の二軍選手のようで浮かばれない。この問題はブームになればカエデの名前登録システムができて解決される。でなければ長年のうちに自然に淘汰されると考える。
 栽培品種を全部記載したが、記述の抜けている部分がかなりある。ある大きさに成長しないと、特色が変わる場合もあるし、場所の移動によって葉に色が変わる場合ある。その年の気象によっても異なる。元気になれば斑がとんでしまうし、弱れば斑がきつくなり枯れてしまう。関西と関東でも斑の色が異なってしまう。迷いながら記入をしているので完璧完成は無いかもしれない。あくまでも参考までということにしてもらいたい。
 2006年7月16日を持って玩槭庭を閉庭し、カエデ2000鉢を寄贈し宇陀市菟田野区宇賀志に移り委託管理を任されている。何が何でも次の世代にバトンタッチしたいからである。。


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